私たちは日々、たくさんの出来事に反応しながら生きています。その中で、「うまくいかなかった」「やってしまった」と感じたとき、つい自分を責めすぎてしまうことがあります。
実は、その背景には脳の“あるクセ”が関係しています。自分を少しやさしく見つめ直すために、「脳のしくみ」についてまずは一緒に考えてみましょう。
人間の脳には、ネガティビティ・バイアスというクセがあります。これは、「いいこと」よりも「悪いこと」に強く反応しやすい脳の性質です。
たとえば、100人に「すごいね!」とほめられても、たった1人に「ダメだね」と言われたら、その1人の言葉ばかりがずっと頭に残ってしまう。そんな経験、ありませんか?これは、私たちが生きのびるために、進化の中で身につけてきた「危険察知能力」なのです。
脳には、大きく分けて2つのチームがあります。
🧠 原始脳(感情や本能をつかさどる部分)
代表:扁桃体(へんとうたい)
働き:危険や恐怖をすばやく察知して、体を守ろうとする「アラーム装置」
🧠 理性脳(考えたり判断したりする部分)
代表:前頭前野(ぜんとうぜんや)
働き:考える、我慢する、冷静になる、など“人間らしい判断”をつかさどる部分
強い不安やストレスがかかると、扁桃体のアラームが鳴りっぱなしになり、前頭前野の働きが弱まりやすくなってしまいます。その結果、「どうしよう…」「もうムリ…」といった感情が先にあふれ、あとになって、自分を責めてしまったり、後悔することがあるのです。
大切なのは、脳にはそういう仕組みがあることを、まず知っておくこと。脳は、あなたを守ろうとして反応しているだけ。それを知っているだけで、「いまは扁桃体がさわいでるな」「落ち着いたら、前頭前野にバトンタッチしよう」そんなふうに、一歩引いて自分を見つめることができるようになります。
強い不安や怒りに巻き込まれているとき、理性的に考えることがむずかしくなるのは自然なことです。感情の波が少しおさまれば、前頭前野はまたしっかり働きはじめますので、「どうすればよかったかな」「今からできることは?」と、“選べる自分”に戻ることを意識してみましょう。
前頭前野がしっかり働くようになるのは、20歳をすぎてからと言われています。つまり、子どもや思春期の脳はまだまだ発達の途中。感情を調整したり、冷静に判断する力は、これから育っていく段階にあります。
子どもが感情的になっているとき、その裏で「原始脳」が大きくアラームを鳴らしているのかもしれません。そんなときに、「なんでそんなことするの!」と怒るよりも、「いま、びっくりしただけかもしれないね」「すごく腹が立ってるんだね」と、“感じていること”に名前をつけてあげることで、子どもの脳は少しずつ安全を感じ、前頭前野が働く準備をはじめていきます。
イライラしたり、落ち込んだりするのは、人間なら当たり前のこと。そのあとに「どう切り替えるか」「どう立て直すか」を身につけていくことで、心はぐんと強くなっていきます。その力は、いくつになっても育てられる、一生役に立つ“こころのスキル”でもあります。