日本人にとっての、ウェルビーイングって?
世界的にウェルビーイングが注目される中で、「では、日本人にとってのウェルビーイングとは何だろう」そんな問いが、少しずつ浮かび上がってきています。
ただ、日本人と一口に言っても、育ってきた環境や価値観、感じ方は本当にさまざまです。
ここで何かを一括りに定義づけたいわけではありません。
そのうえで、日本という文化の中で長く大切にされてきた心の在り方や美意識が、私たちの感じ方や関わり方に影響を与えてきたことも、確かにあるように思います。
日本文化に根づく、奥ゆかしさという美しさ
日本には、「奥ゆかしさ」「言わずもがな」「察する」といった、言葉にしすぎないやさしさがあります。
感情を強く表に出さず、場の空気を読み、相手の立場を思いやる。
そうした感性は、人と人との間に調和を生み、関係をなめらかにつないできました。
感情を抑えること、前に出すぎないことが美徳とされてきた背景には、集団の中で共に生きるための知恵があったのだと思います。
それは、決して否定されるべきものではなく、むしろ、今も大切にしたい日本の美しさです。
一方で、私たちを取り巻く環境は大きく変わりました。
情報は瞬時に世界をめぐり、価値観は多様化し、正解が一つではない場面が増えています。
そんな中で、「感じていることを言葉にしない」「感情を外に出さない」という在り方が、知らず知らずのうちに心の負担になっていることもあります。
我慢することが当たり前になり、気づけば、自分が何を感じているのか分からなくなる。 それは、日本的なやさしさが悪いからではなく、時代の変化の中で、少しだけ調整が必要になってきているのかもしれません。
「感じること」を、そっと足してみる
ウェルビーイングの視点で大切にしたいのは、これまでの文化を手放すことではありません。
奥ゆかしさや思いやりを大切にしながら、そこに「感じること」を、そっと足してみる。
感情をぶつけることでも、すべてを言語化することでもなく、まずは自分の内側で、「いま、どんな感じがしているか」に気づいてみること。
嬉しい、ほっとする、少し疲れている。
言葉にならなくてもかまいません。
五感を通して感じることも、心を整える大切な入り口です。
風の匂い、
お茶の温かさ、
静かな時間の心地よさ。
感じることは、日本人が苦手なものではなく、本来、とても得意としてきた力でもあります。
私たち大人が、自分の感情や感覚に気づき、無理に抑え込まず、静かに受け取ること。
その姿は、教えなくても、説明しなくても、家庭の空気として子どもに伝わっていきます。
「感じていい」
「立ち止まっていい」
「自分の内側を大切にしていい」
そうした感覚は、これからの時代を生きる子どもたちにとって、安心して挑戦するための大切な土台になります。
ウェルビーイングとは、誰かの型に合わせることではなく、自分にとって心地よい在り方を、文化の文脈の中で見つけていくこと。
日本人にとってのウェルビーイングもまた、一つの答えではなく、一人ひとりが調整しながら育てていくものなのだと思います。 今日という一日の中で、あなたが大切にしたい「感じ方」は、どんなものだったでしょうか。